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Fancy Dance | イサカプレミアと映画をより深く観るポイント

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Fancy Danceのイサカでのプレミアイベントに行ってきました。深く観るポイント!とは烏滸がましいですが、ガイオコーノ(カユーガ)のことを少し学んでいるので是非掘り下げたいと思います。

ライタープロデューサーのErica Tremblay エリカ・トレンブレイが映画の紹介、そしてQ&A  (ガイオコーノ (Cayuga) のネイティブ話者・教師であるスティーブン、ミシェルも交えて) をするという何とも唯一無二の機会で、いまも余韻に浸っています。

そして特筆すべきはそれがガイオコーノの土地、イサカで行われたこと。

この映画、Appleが放映権を買い取り、6/28にapple TVでも公開になりましたが(日本含め世界中で公開)

それに先駆けて、いくつかの映画館で公開されているので、是非映画館に足を運んでほしいです。

イサカは今のところCinemapolisで7/4まで公開予定です

“ファンシー・ダンス”のプロット

母が行方不明になり、おば (ジャックス, リリーグラッドストーン) と暮らすロッキ

小さいころから窃盗はあたりまえで

車や貴重品を盗んでは換金する暮らし

母とおばはかつてパウワウダンスがとても上手で

パウワウには絶対帰ってくるからそこでお母さんにあえる

と言われ期待していたロッキ

ところが、母が行方不明となったため児童養護職員・祖父母(白人)によりジャックスとロッキは引き離されてしまい・・・

“ファンシー・ダンス”をより深く鑑賞できるポイント

①ジャックスとロッキがしゃべる言葉は何語?

ガイオコーノ語です。

ガイオコーノ語は現在のニューヨーク州フィンガーレイクス地域にあるカユーガ湖 (Cayuga Lake) エリアにもともと住んでいた先住民のガイオコーノ族 (英語ではカユーガ族) の言葉

現在ガイオコーノ語を第一言語とする話者は全世界で10人程。

IthacaのCayuga Stには現在ガイオコーノが併記されるようになりました

②映画の舞台となっているのはどこ?

オクラホマ州のセネカ = カユーガ居留区

③どうしてNYエリアの先住民がオクラホマにいるの?

18世紀のサリバンキャンペーンによって土地を奪われ、現在は多くがカナダのSix Nations RezとオクラホマのSaneca-Cayuga Rezに住んでいます。

④ファンシー・ダンスとは

パウワウの踊りの一つで、フリンジのついた服などで踊る

イサカで公開された際には、ガイオコーノ語タイトルがつきました。

⑤イチゴたくさん食べてたね・・・

劇中でロッキが初経を迎えるシーンがある

他の文化のことは知らないが

日本では初経はおめでたいことで、お赤飯を食べたりする

ガイオコーノにとっても、とても大きな意味を持つことで

実際のところは分からないのだけど、ジャックスが即興でセレモニーのようなことをしてあげたり、ダイナーでもイチゴの食べ物をたくさん頼んだりする(可愛いシーン)

ガイオコーノ(とホディンソーニ -Six Nation-)にとって、イチゴはとても重要な食べ物だそうだ

初夏、一年で最初の果物がイチゴで、それを祝うセレモニーがある

イチゴは大事な食べ物であるとともに、薬でもあり、その種はまるで星 (=先祖) のように、私たちに方向を示してくれるものなのだそうだ

実際に、ガイオコーノ語ではイチゴと星はとても似た単語になっているのも面白い

AppleTVからお借りしました

もっと詳しく

①劇中で話されているガイオコーノ語について

ガイオコーノが全世界でスクリーニングされる意義

この映画の一番の魅力は、スクリプトの半分がガイオコーノで書かれていることだと思う

上で書いた通り、ガイオコーノ語は地球から消えつつある危機にある言語

両手で数えられるファーストスピーカーのうち、最年少が現在50代のスティーブンだ。

スティーブン以外はカナダのSix Nationsに住む高齢者で、オクラホマのセネカーカユーガ居留区での最後の第一話者は1989年に他界した。COVID-19も、第一話者数に打撃を与えた。

インタビューでも見たことがあったけど、上映会でエリカがこう話していた

色々な賞を受賞できて、それはもちろんとても光栄だけど、私の一番の誇りは以前ガイオコーノの第一話者たちもいる中で上映した際に、おばあさんがわたしのほっぺを両側からぎゅっとつかんで”great work”とガイオコーノ語で言ってくれたことなんです。地球から消える危機に瀕している言語が、これから全世界でスクリーンやインターネットで公開されるんです。私はとても恵まれたとこに、カナダの大学でガイオコーノを三年間学ぶ機会を得た。ガイオコーノ語を学んだものとして、自分の中にとどめるのではなくて、シェアしていくのは義務だと思うんです。私は映画製作者として、できることをしたいと思った

エリカ

ガイオコーノの未来への希望

悲しいストーリが主軸にあるけれど、この映画には大きな希望があると感じた。

それは、ジャックスをはじめとする”若い大人世代”がガイオコーノ語を日常的に話すだけでなく、

ロッキのような次の世代にもそれがつながっているところだとおもう

ジャックスとロッキはガイオコーノで話したいときにガイオコーノで話す

内緒の話(白人に聞かれたくない)の時にガイオコーノで話す

次観るときにもっと意識したいけど、より自然と湧いてくる感情の時にガイオコーノで話しているのかな?

二言語以上話す人は分かると思うけれど

どちらも母語という場合を除いて

やっぱり母語とそれ以外の言葉は違うと思う

エリカは、セリフを書いているときに

どの場面をガイオコーノにしようと思ったのだろう、とか考えた

自分がジャックスとロッキだったら、どういうときに自分たちの言葉で話したいと思うだろう?

特に日本語はとてもニュアンスの強い言語だから

英語やほかの言語にするのが難しい

ガイオコーノもそうだ

英語で話しているときとガイオコーノで話しているときは違う、と聞いた

(英語でしっくりくる言い方がない!とよく言っている)

やっぱり母語(または本来の言葉)で話しているのが、一番自分に近いんだと思う

ガイオコーノだけじゃなくて

地球上の多くの先住民の言葉が消滅していっている

失ってから気づく、では遅い

ガイオコーノは、現在はスティーブンや多くの有志が言語を教えていて、何人かは教師となって、次の人たちに教えている

エリカも3年間、カナダでガイオコーノ語を学んだ

言葉や文化は奪われてきたけれど、言葉の中に、単語の中に、私たちの文化は今も残っています。ガイオコーノ語でお母さんは“クノッハ”で、おばさんは“クノッハ ア”つまり、小さなお母さん、もう一人のお母さんという意味なんです。これを知ったときに私はとても心を打たれました。私は居留区でお母さんや多くのコミュニティメンバーに育てられ、幸せに思う。私にも姉妹がいて姪がいて、とても愛しています。そしてこの映画のジャックスも、ロッキに対して母のような深い愛情を持っている。

エリカ

②③ diaspora, removal, colonization

インディアン – ネイティブアメリカン -先住民には、未だに多くの問題がある

失踪・行方不明、家族の引き離し、殺人、自殺、中毒、暴力・・・

アメリカで白人によって土地を追われ

言葉を奪われ (キリスト教の学校へ強制的におくられ、英語を強制された)

文化を奪われ (ほとんどの儀式は違法とされた)

家族を奪われる (先住民の子供は親から突然引き離され、白人の元で育てられるということが普通に行われていた。”子供のため”に白人のほうが優れているという思想。)

—それら多くを、この映画の節々に見ることができる

この映画は過去を舞台にしたものではなく、現代を舞台にしているというのにだ

アメリカやカナダでは近年、BIPOCなどの意識の高まりもあり、先住民に関する運動も多くなっている

アメリカは移民の国

白人であれば、先祖は皆ヨーロッパから渡ってきたセトラーだ

Rez was only where you are allowed to be what you are (居留地は私たちが唯一私たちであっていい場所でした)

Erica Trenbley @ Cinemapolis in Ithaca NY

自身がRezで育ったエリカがいった言葉はとても重い (Ericaの”REZ DOG”も是非観てほしい)

だからランドアクノーレジメントだけじゃなくて、もっとみんなで話してほしい。先住民が住んでいて追われた土地に住むこと、先住民は過去じゃなくて現在・未来をあなたたちと同じように持っていて、でも計り知れないほどのトラウマ、問題をかかえている。形だけのアクノーレッジメントよりも、思いやりを持つことと、何かできることがないかって、あなたの友人隣人が困っていたら何かできないかって考えてほしい。今日ここで見聞きしたことを他の人に話してほしい。

エリカ

スティーブンは今まで何度も繰り返していっている

NY州の道端には、いたるところに青い指標がたっている。<ここはカユーガがいた>, <かつてホディンソーニの〇〇だった>・・・全部過去形だ。確かに、1779の有名な二日間が我々のすべてのように語られるけど、それは大きな間違いだ。私たちには本当に豊かな文化がり、言葉があり、それは現在まで生き続けている。私たちは今日この日も存在している。私たちは現在で、私たちは未来なんだ

スティーブン

④⑤non-indeginousが線引きをするところ

私たちは人間ですから

“知りたい”という気持ちが自然に湧いてきます

知ることは、理解することの大きなステップであることが多いです

ただ、境界線を知って、抑えることも大事だと、先住民のことを知っていくうちに分かったことです

特に、セレモニーなどは神聖なもので、多くの先住民の方にとってそこははっきりしている気がします。

映画の中のイチゴやたばこについて、ガイオコーノが初経を迎えた時にイチゴを食べるかどうか、タバコの使い方などは私は知りません。

ただ、イチゴという果物がガイオコーノにとってsignificantであることを書いてます。

Apple TVサイトからお借りしました

長くなってしまいました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

少しでも、この映画をより深く観れるヒントになれば幸いです

Apple TV+は無料期間があるようですので、もし登録していない方でも、是非この機会に1人でも多くの人に、観てほしいです。

2023年にイサカで公開されたときに、私は観に行けなかったんですが

何人かの友達はその時見に行って、今回の2024年の公開が二回目でした

“去年の私と、今の私は違っているから、今回見た時に違う視点や新たな発見があった。”と言っていました。

私も、もう一度見たいと思うし、その時にどういう新しい発見があるか、きになります。

イサカに住んでいることがどういうことなのか(しかも移民)

先住民の土地に住んでいることがどういうことなのか

アメリカや同じようなことが起こった土地に住む人に見てほしいし

日本人として日本のしたことも、もっと知らないといけないと思ったのでした

それにしても

リリーグラッドストーンの笑い方本当に好き・・・(笑)

Author
Eliza

ニューヨーク州フィンガーレイクス地域からアメリカ (主にNY州) 情報を発信中。食べることと飲むことが好き。何かを自分でつくることや知ることが好き。そして結構一人の時間が好き。リスが好き。人生のためのお金の勉強中。前はフランスに住んでいました。薬剤師/PhD

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