アメリカ、ニューヨーク州の薬局で働いていました。初めて利用する薬局で聞かれること、流れについて説明します。
プロフィールの作成
アメリカの薬局を初めて利用する場合、まず薬局のシステムにプロフィールを作ってもらう必要があります。
これは、正しい患者さんに正しいお薬(および医療機器)を正しい請求で行うためです。
また、アメリカではかかりつけ薬局を推奨していますので、日本でいうお薬手帳のように、薬およびワクチン接種の記録となります。薬剤師が調剤前に処方箋の監査をする際にこれらの情報やアレルギー情報などを確認します。
チェーンの薬局ではどこかの店舗で一度作っていれば、他の店舗でも情報は共有されます。
また、他の薬局から処方箋がトランスファーされた場合、その薬局でも基本情報は共有されます(が、初回利用時に確認されます)。
また、処方箋、ワクチンともにプロフィールは同じですので、薬の受け取りがなくても、ワクチンを接種していればその薬局でプロフィールは作られます。
処方箋の場合
ドクターから処方箋が送られてきて、マッチするプロフィールがない場合、薬局で新しい仮のプロフィールを作ります。
処方箋に患者さんの電話番号が記載されている場合、薬局からその番号宛にSMSのメッセージまたは電話で連絡をします。連絡が取れた場合、電話にて基本情報(氏名、生年月日、住所、電話番号)、保険情報、アレルギー情報などを聞かれます。
結構多いのが、ペニシリンやサルファ剤のアレルギーです。あとは、着色料でアレルギーを起こす方もいます。薬の名前が出てこない場合は、抗生物質などざっくりした情報でも、薬剤師が監査するときに重要になります。
他にも未成年の場合や、赤ちゃんの場合などによって他に聞く項目もあるよ
SMSは薬が準備できたことのお知らせだけでなく、何か問題があった時や、処方箋のリフィルがもうない時など、色々なコミュニケーションに役立ちますのでぜひ利用してください。
連絡が取れなかった場合、または患者さんが先に薬局に来られた場合は薬局で同様の対応になります。
ワクチンの場合
初めてその薬局を利用するのがワクチンの場合も、同様になりますが、多くは薬局窓口での対応になるかと思います。
プロフィール作成時に患者さんから伝えてほしいこと
グルテンフリーを希望
グルテンフリーでお願いしたいです
是非初回来局時にスタッフにお伝えください!もちろん伝え忘れた場合でもいつでも電話なりで伝えてください!薬局ではグルテンフリーの製剤を調べてオーダーできます
リーガルネームとプリファードネームが違う
この名前(リーガルネーム)は使わないでほしいです
アメリカではセクシャリティなど様々な理由によりこのような患者さんは少なからずいらっしゃいます。保険の関係上、リーガルネームが必要な場合があります(保険とマッチしていないといけない)。
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凄くデリケートですが、日本で薬剤師をしていたころには経験しなかったこともあり、私自身失敗してしまったこともありまりますが、薬局では受け取り時の本人確認でプリファードネームを使用できますので、伝えてください。
自分以外が処方箋をピックアップできないようにしてほしい
この薬、家族を含めて、自分以外に知られたくないです
アメリカでは名前、生年月日、住所が分かれば他人の処方箋をピックアップできます(家族など、まとめてピックアップされる方は多いです)。ただ、お薬の内容などによっては他人に知られたくない方もいます。その場合、その旨を伝えてください。
こんな時どうなるの?
薬局からの連絡に応じなかった/連絡がなかった
scamかと思って無視してました
基本的に薬局から電話で連絡を入れるときにはメッセージを残します。また、患者さんの電話番号がSMS対応の場合はSMSを送ります。
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何日間か試みて、患者さんから連絡がなく、薬局にも来られない場合、処方箋は患者さんの仮プロフィールに保存されます (薬の準備はされません)。患者さんがいらした時点で、本プロフィールにして、お薬の準備をします。
処方分の薬がないと言われた
今日から飲み始めなきゃいけないのに、処方箋分のくすりがないって!?
もし、薬局に1-3日分の量があれば、分割できます(パーシャルフィル)。その日のうちに薬局はお薬を注文し、卸の在庫があれば薬が届いてすぐに残りを調剤できます (最短一日)。支払いは残り分を受け取ったときになります(同じ薬局の店舗である必要があります)。
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もし、薬局に手持ちが全くない場合、または処方された全量がその日に必要な場合、他の薬局にトランスファーする必要があります(時間が少しかかります)。
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処方箋を受け取った時点で、もしこのような事態が分かる場合はあらかじめ薬局から患者さんに連絡を入れることが多いです。
医師に伝えた薬局ではない薬局に薬がある
今回ドクターに新しい薬局に送るよう伝えてきたんですが、その薬局に行ってみると、他の薬局で既に準備されているといわれました
おそらくドクターオフィスがかかりつけ薬局にも処方箋を送ってしまい、そちらが先に処方箋を準備した場合、こちらの薬局では保険でエラーになり(duplicate)、薬を準備できません。もしこちらで受け取りたい場合、すでに薬ができているほうの薬局に連絡してキャンセルしてもらう必要があります。
薬局を変えたいと思っている人や、最近引っ越してきた人、大学に通うためにきている学生などで残念ながら結構あるパターンです。
先発品 (ブランド) を希望します
ジェネリックは嫌です
アメリカ(ニューヨーク州)では、医師が特別に指定する場合を除き、基本的にジェネリック薬品での調剤になります。
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先発品を希望される場合、保険で認められるか否かがポイントになります。保険がすぐに認められない場合、Prior Autorisation (PA) が必要になります。これは医師から保険会社に対して、先発品でなければならないという旨を説明し、保険会社がカバレッジを検討する仕組みです。必ずしも認められるわけではなく、かつ通常数日以上時間がかかります。
特定のジェネリックブランドを希望します
この薬はこのジェネリックのブランドがいいです
ジェネリックに関しては薬局レベルで相互交換できます。
薬局は仕入れ値やアベイラビリティなどにより、様々なブランドのジェネリックを使い分けており、必ずしもいつも同じブランドの薬とは限りません (たまに同じ名前のお薬で見た目が変わるのはこのためです)。
ご希望のブランドが特にある場合には薬局で伝えてください。
まとめ
- 初めて薬局を利用する時には基本情報に加えて保険、アレルギー情報などを聞かれます
- 他にも薬の希望だけでなく、プライバシーに関する希望などを伝えます
- 薬局からの連絡は電話かSMS